自己破産とはどんな制度か

自己破産制度とは

自己破産とは、債務者の抱える借金が多額すぎて、返済しきれないことを前提に債務者が「破産手続き開始」の申し立てを行い、債務者の持っている家や土地などの全財産を債権者に対して投げ出して、公平に配分してもらう制度です。

現在の自己破産制度は、2005年に制定された「新破産法」によるものです。自己破産制度の歴史、意義と内容についてご紹介します。

自己破産制度の歴史

破産法が日本で最初に制定されたのは江戸時代のことです。
当時の破産法は、債務者の申し出によって、自分の全財産を債権者に提供し、換価処分して弁済する「分散」と、債務者が一定期間内に完済できず、分割返済も不可能な場合、債務者の田畑や家、家財道具などを売却し弁済する強制執行の「身代限」の2つに分かれていました。

明治時代に入り、分散と身代限が統合され1922年(大正11年)に「破産法」が公布。1952年に免責制度が導入されました。

2005年に自己破産の手続きが簡素化された「新破産法」が制定され、現在の自己破産制度が施行されるようになりました。
また、免責期間が10年から7年に短縮されたために、自己破産者にとっても、生活再建を比較的早く図れるようになりました。

破産者が所有していても差し押さえられない財産の額が、旧破産法の現金66万円から新破産法では99万円まで拡大されました。 

なぜ自己破産制度が必要なのか?

自己破産は債務者の借金が高額に膨れ上がり、経済的に立ち行かなくなった時、裁判所が「債務者の支払い能力が不能」と認めた場合に適用される制度です。
自己破産に陥る人たちは、複数の金融機関から借金をしていることが多く、利子の支払いだけで精一杯となり、自力で生活再建をするのが難しくなるため、自己破産をせざるを得ない状況になります。

自己破産と聞くと、その先の人生が閉ざされてしまうように思われますが、自己破産によって「借金を整理するメリット」があります。債務者が「借金を整理するメリット」とは以下の通りです。

  • 債務者の債務義務すべてが免除される。
  • 自己破産の手続きが開始されると、裁判所から債権者は取り立てが規制され、給料の差し押さえなど強制執行ができなくなる。
  • 最低限の生活保障。
    (例えば、生活上どうしても必要な家財道具などは取り上げられることはありません。)
  • 債務者は経済的な再生を図れる。

債務者にとって自己破産は経済的に再生するための最終手段です。自己破産をすることで生活再建の道を目指すことが可能になります。

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債務の支払い免除までの流れ

自己破産をすると決めた場合、まず法律の専門家である弁護士にご相談下さい。当事務所では自己破産に関する無料相談を実施しております。

債務整理を法律事務所に依頼する場合、弁護士以外は裁判所での「審理」が認められていません。

また、自己破産の申し立てをする際、必要書類が多岐にわたるため、弁護士に依頼した方が書類のチェックも確実で、手続きがスムーズに進みます。
実際の「自己破産の手続き」の流れは以下の通りです。

1.自己破産を行うために、弁護士に債務整理を依頼
※債務整理とは借金を減額にするか帳消しにすること。
債務整理は債務者、債権者間での話し合いが必要なため、弁護士を立てた方がスムーズです。司法書士でも可能ですが、弁護士はすべての訴訟の代理人を務められるので、自己破産の手続きは弁護士に任せた方が賢明です。
2.弁護士から債権者に「受任通知」が送付され、借金の取り立てが停止
債務整理を弁護士に依頼した場合は、債務整理が行われる債権者に対して「受任通知」が送付されます。
3.自己破産の申し立てに必要な書類を管轄の地方裁判所に提出
自己破産の申し立てに必要な書類は、裁判所から取り寄せて記入する書類(破産申立書、免責申立書、陳述書、債権者一覧表など)と自分で用意する書類(給与明細・源泉徴収票・預金通帳・保険証の写し、戸籍謄本、住民票など)の2種類に分かれます。
4.自己破産の審問が行われた後、自己破産の手続きが開始
2005年に「新破産法」が制定されてから、「破産手続き」と「免責手続き」が一体化され、以前より手続きが簡単になりました。「破産手続きの開始」が行われると、債務者が免責拒否を意思表示しない限り、免責の申し立てがあるものと見なされます。
5.免責許可の決定
自己破産の手続きが開始となって2~3か月後に免責の審理が行われ、裁判所で「免責不許可事由」に該当しないことを認められると、「免責許可の決定」がなされます。
6.自己破産の免責が確定し、生活再建への道が開かれるようになります
裁判所から「免責決定書」が送られてきて免責が確定。これで債務者に借金の義務が免除され、生活再建に向けてスタートを切れるようになります。

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自己破産ができない「免責不許可決定」となる免責不許可事由とは

自己破産は免責(借金の返済免除)の許可が決定して初めて、自己破産をしたことになります。免責が認められなければ、自己破産はできません。

債務者に免責不許可事由があると「免責不許可決定」となり、免責が許可されず、自己破産ができなくなります。

免責不許可事由とは

免責不許可事由とは免責不許可となる事由を指し、免責不許可とは自己破産の申し立てを行い、免責許可が不適切だと判断された場合を指します。

免責不許可になると自己破産ができなくなるため、借金の帳消しも不可能になります。

免責不許可事由の例として、自分の収入以上に多額の馬券や、クレジットカードで高級品を買い、膨大な借金を作った場合は「自己破産の申し立て」をしても、裁判所でギャンブルや浪費と見なされ、免責不許可となるケースが大半です。

他にもクレジットカードの現金化や、違法の金融業者から借金をして利子が膨大に膨らみ返済できない場合は、免責不許可となるので注意が必要です。

借金の返済ができず自己破産をしようと考えた場合は、まず「免責不許可事由」に該当しないか調べ、弁護士に相談しましょう。

もし自己破産の申し立てを行い、免責不許可になった場合は高等裁判所に申し立てをすること(即時抗告)ができます。即時抗告の期限は、免責不許可と決定されてから2週間以内です。即時抗告が受理されると高等裁判所で再審が行われます。

免責不許可事由対象と裁判所の判断

  1. 財産の隠ぺいがあった場合(1号)
  2. 不当な債務負担行為があった場合(2号)
  3. 偏頗行為があった場合(3号)
  4. 浪費またはギャンブルや他の射幸行為により財産が減少した場合(4号)
  5. 詐欺まがいの借入があった場合(5号)
  6. 帳簿上で隠匿行為があった場合(6号)
  7. 偽造の債権者名簿提出があった場合(7号)
  8. 調査協力業務違反行為があった場合(8号)
  9. 管財業務妨害の行為があった場合(9号)
  10. 7年以内に免責取得があった場合(10号)
  11. 破産法上の義務違反行為があった場合(11号)

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自己破産・債務免除後の破産者の生活

個人の自己破産の場合、生活に最低限必要な財産まで処分されてしまうと、自己破産後の生活が送れなくなります。

「自分で自由に使えるお金や家財道具がなくなるのではないか?」と不安になる方がいらっしゃいますが、法的に破産者が自由にできる財産(自由財産)が認められています。

破産管財人の管理処分権が及ばない自由財産と「自由財産権の拡張」

自由財産とは、破産者が自己破産後も生活できるよう、自己破産手続開始決定をした場合でも、破産者が自由に管理、処分することができる財産です。

自己破産の手続きを進めていく中で、裁判所が破産管財人を選任し、債務者の財産の調査や債務者を免責にするかどうか調べたりします。破産管財人が選任されると、破産者の財産はすべて破産管財人に帰属し、管理処分権が生じますが、自由財産には破産管財人の管理処分権が及びません。

自由財産には大きく分けて、以下の3つがあります。

1.新得財産
自己破産手続きを行った後、破産者が新たに獲得した財産を指します。
2.99万円以下の現金
99万円以下の現金は自由財産として破産が所有することを認められます。現金に預貯金の金額は含まれません。
3.差押禁止財産
法律上、差し押さえることが禁止されている財産です。いわゆる生活を送るうえで、最低限必要な財産を指します。具体例を挙げると、生活必需品である衣類、寝具、家具、建具、台所用品などです。
また、「生活保護受給権」や「国民年金受給権」も差押禁止財産に該当します。つまり、自己破産をしても、生活保護や年金は受け取ることできるというわけです。
ただし、破産者によっては、自由財産だけで生活を維持することは無理な場合もあります。その場合、裁判所の判断によって「自由財産の拡張」と呼ばれる制度が適用になることがあります。
例として生活上に必要とされる自動車や生命保険の解約返戻金が「自由財産の拡張」に該当します。
基本的に「自由財産の拡張」が認められるかどうかは、破産者の財産、収入、生活状況を調査したうえで裁判所が決定します。そのため自己破産の申し立てをする前に、弁護士に相談して確認することが必要です。

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免除されないもの(非免責債務)

自己破産で免責許可がおり、破産者の生活維持のために自由財産が認められる一方で、「非免責債権」というものも存在します。

非免責債権とは、自己破産で免責されない債権を意味しており、「非免責債務」とも呼びます。非免責債務は、破産後も自分で支払っていかなくてはなりません。

具体的に非免責債務となるものは以下の通りです 

1.租税の請求権
市民権税や健康保険料、年金などの滞納があった場合、自己破産をしても免除されません。
2.破産者の悪意によって行われた不法行為の損害賠償請求権
夫が妻に悪意を抱き暴力をふるって離婚した場合、妻に支払う慰謝料は免除されません。
3.破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
故意に他人を傷つけたり、重大な過失によって交通事故を起こしたりした場合の損害賠償も免除されません。
4.破産者が扶養義務者として負担すべき費用に関する請求権
離婚や認知による養育費の支払いが滞っていても免除されません。
5.労働者の給料請求権、預り金返還請求権
雇用者が法人ではなく個人事業主の場合、従業員の未払い給料や退職金、身元預かり保証金などの請求権を持っていても免除されません。
6.破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
自己破産の申し立てを行った際に、提出した「債権者名簿一覧」に記載し忘れた債務が、免責許可発生後発覚しても、その分の債務は免除されません。
7.罰金などの請求権
交通違反をした場合の罰金なども免除されません。過料、追徴金、科料の請求権も免除されません。

生活に設けられる一定の制限・条件

1.財産の管理処分権を失う
破産手続開始決定と同時に破産管財人が裁判所から選任された後に、「破産手続き費用を捻出できるだけの財産」(マイホームや退職金、車などの資産価値が20万円~50万円以上のものが該当します)があるときには、債務者に対しての財産分配などの破産手続きが進められます。
2.住居の制限
免責許可決定がなされるまでは、住居の移転や長期滞在される旅行は認められません。
3.法律上の資格制限
破産者は公法上の資格制限と私法上の資格制限があります。
公法上は、弁護士や公認会計士といった士業が該当します。一般公務員や医者、看護師、薬剤師などの法律による資格制限がない業種は、破産手続き開始決定を受けても保有資格を失うことはありません。私法上は、後見人、後見監督人、保佐人、遺言執行者などになることができません。
また、株式会社の取締役や監査役については退任事由になります。
ただし、これらの制限は、免責許可の決定までの期間と、破産管財人がつく場合の話です。(一定の財産がなく同時廃止手続きになる場合は、自己破産手続き開始と同時に終了になりますので、財産の管理処分権は失われません。)
資格制限に関しても、免責許可が決定すれば解消されます。したがって、免責許可の決定後は日常生活への影響は大きくありません。
借金の問題には必ず解決策があります。ご相談に来られた方が最も幸せになれるような解決をご提案いたします。