否認権とは

たとえば、破産する前に持っていた土地を友人にあげていた場合、本来であれば、その土地も自己破産後に債権者に配当されるべきもののはずです。破産管財人がその行為を取り消すことができる権利が否認権なのです。
もう少し詳しく見ていきます。
自己破産の手続きにおいて、破産手続きが開始されることが決定した時に破産者が所有している財産は、破産管財人によって管理され、換価処分できるものは債権者に配当されることになります。
ですから、破産手続きが開始されることが決定した時に破産者が所有していない財産については、換価処分の対象にはならないことになっています。
ところが、破産手続きが開始されることが決定する前に、財産を残そうとして名義を変えたりするようなことがあると、破産手続自体の意義がなくなってしまい、信頼性も失ってしまいます。また、このような財産移転や財産隠しを認めてしまうと、債権者間の公平を失ってしまいます。
このようなことを防ぐために破産法では、破産管財人に「否認権」という権利を付与しているのです。
破産管財人が否認権を行使することで、本来であれば債権者に配当されるはずだった財産を取り戻すことができます。
なお、破産管財人が否認権を行使できるのは、破産者の行為だけではなく、破産者と同一視できる第三者の行為も否認することができます。
この否認権は、大きく2つに分けることができます。
・詐害行為否認(詐害否認)
・偏頗行為否認(偏頗否認)
詐害行為否認(詐害否認)
詐害行為とは、債権者を害する破産者(またはそれと同視できる第三者)の行為のことをいいます。
たとえば、財産を不当に安く売却したり、または贈与するような行為や、逆に財産を不当に高く購入する行為も詐害行為ということになります。
このような詐害行為について否認権が認められるには、破産者が債権者を害することを知っていたことが必要になりますが、破産申立後であれば債権者を害することを知っていたかどうかは不要です。
この詐害行為否認には、次のようなことも破産法では規定されています。
破産者が破産債権者を害することを知ってした行為の否認(破産法160条1項1号)
破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立てがあった後にした破産債権者を害する行為の否認(同項2号)
詐害的債務消滅行為の否認(同条2項)
無償行為の否認(同条3項)
相当の対価を得てした処分行為の否認(同法161条)
偏頗行為否認(偏頗否認)
偏頗行為とは、他の債権者には弁済していないのに、家族や親族、友人にだけは弁済をしてしまうような行為や、すでに存在する債務について担保提供をしたり、債務を消滅させることをいいます。
債権者の平等に反するので、特定の債権者にだけ利益を与える行為を否認する権利ということになります。
この偏頗行為否認には、次のようなことも破産法では規定されています。
破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした偏頗行為の否認(破産法162条1項1号)
破産者が支払不能になる前30日以内にした非義務的偏頗行為の否認(同項2号)
破産法では、その他にも次のような否認権を認めています。
権利変動の対抗要件の否認(破産法164条)
執行行為の否認(同法165条)
破産管財人によって否認権が行使されると、破産者(またはそれと同視できる第三者)の行為が否定され、財産の原状回復ができることになります。破産財団に組み入れられ、債務者に配当することができます。
否認権を行使できるのは破産管財人だけです。
この否認権は、訴え、否認の請求又は抗弁によって行われます(破産法173条1項)が、否認の請求の場合、簡易迅速に否認権を行使することができます。ただし、当事者双方が立ち会うことのできる審尋期日を開く必要があります。
実務上は、否認の訴えを選択するケースが多く、通常の訴訟手続ということになります。
否認権は、破産手続開始の日から2年経過すると行使することができません。また、否認しようとする行為の日から20年を経過したときも行使することができなくなります。(破産法176条)

関連記事はこちらをご覧ください。

借金の問題には必ず解決策があります。ご相談に来られた方が最も幸せになれるような解決をご提案いたします。