生活保護受給者の自己破産(費用、手続き、タイミングなど)について

生活保護とは、何らかの理由(病気によって働けない、離婚して子供もいるため生活が苦しい、など)で収入が途絶えたり、生活が立ち行かなくなった場合に国がお金を出してくれる制度です。
このように生活保護を受けている方は自己破産できるのでしょうか?そして自己破産後も生活保護は受けられるのでしょうか?
生活保護者の自己破産は費用・手続き・タイミングなど、悩みも多いため、よくある質問・不明点についてまとめました。

生活保護受給者の自己破産は可能

まず、生活保護の受給対象となる要件は以下の通りです。

  1. 資産がない。
  2. 援助してくれる身内、親戚がいない。
  3. 病気など何らかの理由で働けない。
  4. 1から3を満たした上で、定期収入が一定以下であること。(収入の物差しは、世帯の人数、年齢、地域などによって変わってきますから、詳しくはお住まいの役所に問い合わせてください)

この4つの要件からも分かるように、生活保護で受給するお金は、あくまで生活を安定させるためのものです。つまり、生活保護の受給金を借金に回すことは難しく、生活保護の申請を考えている方で借金がある方は、福祉事務所や弁護士などに自己破産を勧められるケースが多いです。
なお、既に受給中の方も自己破産をすることは可能です。

ただし、自己破産の申請をしておきながら、隠れて借金をしてギャンブルにつぎ込む、財産や収入を報告しない、収入をはるかに超える買い物をする、特定の債権者に特別な弁済をするなど、自己破産の免責不許可事由に当たる行為をすると生活保護は認められません

生活保護を受けていて自己破産できない人はほとんどいませんが、多額の借金を重ねるなど誠実さが著しく欠けていると判断された場合、生活保護受給者であっても不許可事由となったケースがあります。

生活保護受給者は、法律扶助を受けて援助費用(弁護士費用)・予納金が免除になる

自己破産の申し立ては債務者自身が行うこともできますが、書類が多岐にわたる上、裁判所や債権者とのやり取りなどがあります。専門家である弁護士などに依頼した方がスムーズにことが運ぶでしょう。

自己破産に関する問題は司法書士も担当できますが、債権額が140万円以下の民事事件の限りにおいてなので、そこは注意が必要です。弁護士などに依頼すると、個人再生や任意整理、自己破産など、個人個人に合った債務整理の方法を提案して、力を貸してくれます。個人再生や任意整理では生活がどうしようもないほど圧迫されるのであれば、迷わず自己破産を選んでください。

いざ自己破産をしようと決意しても、お金の面で不安が多いことでしょう。下記に費用の概算を示してみました。

自己破産費用の概算(東京地方裁判所、平成24年の場合)

1.申し立てにかかる費用
印紙代:1,500円
2.予納金
・同時廃止事件(財産がない場合):10,290円(即日面接:15,000円)
・管財事件(財産があり、破産管財人によって管理される場合)
債務総額5,000万円未満:50万円
債務総額5,000万円から1億円未満:80万円
以下 略
・少額管財事件(通常の管財事件より手続きを迅速化、軽減化して債務者の負担を軽減しようとしたもの)
最低20万円(個人1件につき16,090円)
3.予納郵券
4,000円
4.弁護士費用
弁護士事務所によって異なるが、20万円から40万円くらい
5.成功報酬(自己破産の免責許可決定が得られた場合)
弁護士事務所によって異なるが20万から40万円くらい

結構なお値段だと思います。その時は、法テラスを活用しましょう。

全国にある法テラス(日本司法支援センター)は、収入が低い人のために法律相談をしてくれる所です。生活保護受給者ならば、法テラスに依頼すれば法律扶助を受けることができ、弁護士費用や予納金(裁判所に支払うお金)、成功報酬が原則免除されます。生活保護者で法テラスを利用する人は、生活保護受給の証明書など必要書類を役所で発行してもらい、法テラスに提出してください。

しかし、生活保護受給者であっても消費者金融などの過払い金請求で回収できた場合は、弁護士費用などが発生することがあります。法テラスは、自分で弁護士を選べない、相談時間が短いなどの不満も聞かれます。そういった体験談を踏まえて信頼できる弁護士をお探しの方は、当事務所でも無料相談を承っておりますので、ぜひご相談ください。

自己破産、生活保護申請タイミングは生活保護申請を先に

生活保護申請後に自己破産申請をすることは「可能」

生活保護は、借金が原因だとしても生活が困窮していれば対象とされます。生活保護受給者ならば、法テラスをすぐ利用できるので自己破産費用もかからず、免責許可もおりやすいです。

自己破産後に生活保護の申請をすることは「可能」

自己破産をすると債務がなくなる代わりに、5年から10年は新規の融資が受けられなくなります。知り合いからの借金も慎みましょう。しかし、その後入ってくる収入はそのまま自分の収入になります。

生活保護は、一定の収入以下の世帯が受け取れるものです。一定の収入以下という物差しは、世帯の人数、年齢、家族構成、地域などによって変わってきます。自己破産したからといって必ずしも受給を認められるわけではありません。しかし、破産後の収入が一定以下なら、認められる可能性は高いでしょう。

法テラスの無料相談を利用する場合も収入が一定以下であることが条件の一つとなります。生活保護の受給者ならばその条件を自動でクリアできますが、そうでない場合給与明細、離職票などが必要です。

自己破産手続き中の生活保護申請をすることは「可能」

生活保護は、「無差別」「平等」の理念を旨としています。自己破産手続き中でも、生活保護の4つの要件(生活保護の受給者の自己破産は可能の項をご参照ください)を満たせば申請できます。

ただ、自己破産の免責許可がおりたり、生活保護の申請が通るまで当面の生活費の工面が大変だと思います。そんなときは役所に相談したり、法テラスを利用したりして弁護士に相談して下さい。法テラスならば、弁護士費用などを立て替えてくれるので、持ち出しが少なくてすみます。

生活保護を受給している場合の自己破産手続きと流れ

まず、法テラスなどで弁護士に自己破産の手続きを依頼しましょう。弁護士は依頼を受け、各債権者に「自己破産します」という旨の通知を送ります。

消費者金融などに多額の借金をすると、督促状や取り立てが激しい場合があるかもしれません。この通知を消費者金融などが受け取ると、正当な理由なくして取り立てなどはできなくなります。つまり、自己破産の手続きが始まると、支払いはほぼ凍結するのです。そうでなくとも、生活保護のお金は生命線なので、差し押さえが禁止になっていますので、安心してください。

裁判所に自己破産の申し立てをすると、1、2か月後に審尋が行われます。審尋は裁判官から支払い不能かどうかの調査のための質問を受けることです。なぜ1、2か月後なのかというと、債権者の意見を聴取する期間を設けるためで、審尋は、弁護士が代理で行ってくれます。

その後、同時廃止事件か管財事件か決められます。同時廃止事件とは、不動産や預貯金など破産管財人が換金して債権者に分配する財産がない場合、破産手続き開始と同時に手続きを終了することを言います。

管財事件とは、破産管財人が選定され、債務者の財産を精査した後換金して債権者に平等に配分することです。

そして、同時廃止事件でも管財事件でも手続き中は弁護士や宅地手物取引士など一定の職業に就けません。しかし、これはあくまで手続き中だけで、手続きが終了すれば復職できます。自己破産をしてから5年から10年経てば住宅ローンも組めるようになるので、結婚も諦める必要はありません。

ましてや、保護者が自己破産しても子供が就職や結婚に制限を受けることはあまりないでしょう。そこは当事者同士の問題であることが多いからです。しかし、官報に住所まで記載されてしまうので、信用が売りである金融機関への就職は難しいこともあります。

自己破産申し立ての次は、免責許可申し立てをします。これが認められて初めて負債はなくなります。2、3か月後に裁判所から呼び出されて、裁判官から免責許可申し立ての内容を口頭で質問されます。これは免責審尋と言われるもので、本人も出廷しなければなりません。免責審尋から1、2週間後に免責許可か不許可か通知されますが、不許可の場合、抗告申し立てをすることができます。

が、生活保護受給者の場合、支払い能力がないとみなされるので管財事件や不許可になることはほとんどありません。 ここでいう裁判所とは、どこの裁判所でも良いのではなく、申立人の主たる居住地を管轄する地方裁判所のことです。

一方、東京地方裁判所では、即日面接を行っています。申し立て当日か3営業日以内に裁判官が弁護士と面談して、問題がなければすぐに免責許可の手続きを行えます。同時廃止事件であるならば通常より早く、免責許可が決定します。破産手続きの申し立てをしてから、2か月以内に免責審尋、3か月以内には免責決定が決まるでしょう。

また、一般的な自己破産の流れについて、詳しくはこちらのページもご参照ください。

生活保護者の自己破産後、不動産(住居、土地など)や税金滞納はどうなる?

生活保護を受給している間は、税金(住民税、保険料、固定資産税など)を支払う必要はありませんが、以前に滞納していた分は自己破産しても消えません。つまり税金は免責されないのです。その他にも、養育費、従業員への未払い給料、不法行為による損害賠償、意図的にリストから外した債権者への負債、罰金なども免責されません。

生活保護のお金で負債の滞納分を支払うことはできませんし、差し押さえることもできません。よって延滞料金をかけない、支払いを猶予してくれるなどの措置が取られます。支払えるようになったら支払いましょう。

税金は、督促状を受け取った日から5年で消滅時効となります。自治体によって対応は違うのですが、役所から何も通知がない場合5年経てば、滞納分の税金の負債は消えます。

生活保護受給者も自己破産と同じく養育費、罰金などの負債はそのままです。これらは税金と違い、相手方との交渉で解決方法を見出さなければなりません。そのため、法テラスなど、弁護士のご利用をおすすめします。

不動産については、生活保護は次の条件が揃えば持ち家に住むことを認めています。

  1. 本人、配偶者が65歳以下で自宅に担保が設定されており、なおかつ家が500万円以下の価値であること。
  2. 住宅ローンがないこと。
  3. 処分価値と利用価値が著しくかけ離れていないこと。

しかし自己破産の手続きをすると、任意売却か競売にかけられます。

自己破産は、官報に名前や住所が載る、金融機関のブラックリストに信用情報が載る、見積もり退職金の4分の1は処分されるなどがありますが、生活にそれほど支障はでません。

なぜなら、自己破産は法律できちんと認められている多重債務の救済方法だからです。必要な家具、衣類などは没収されませんし、電話も使えます。手元に99万円、通帳に20万円までは残せるなど当面の生活費も残せますし、選挙権などの国民の権利もそのままです。

※自己破産後の生活について、詳しくはこちらのページをご参照ください。

これに懲りて消費者金融などで二度と借金をしたくない方は、貸付自粛制度を利用しましょう。貸付自粛制度とは、お金を貸さないでくださいという申告を、本人または近しい人が日本貸付業協会に申告する方法です。そうすると、登録され、一定期間借り入れはできなくなります。費用は一切かかりません。

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